カナダ・メープル街道(2)

トロントからケベックまでの約800km、往路は主に主要都市間を高速道路で結んだが、帰路は開拓時代の面影を残す小さな町や村を訪ねながらのドライブだった。ここは、カナダの落葉樹地帯で、とくにメープル(サトウカエデ)の樹木が密集し、セント・ローレンス川沿いの街道や、点在する町や村は秋には見事な紅葉に彩られる地帯でもある。10月には紅葉見物に世界中から観光客が訪れる。
しかし、取材時期は夏。古い教会やビクトリア調の建物などロマンチックな雰囲気のある町、湖水のほとりに強い太陽の光をあびて、揺れるメープルの木々もまたカナダ独特の風景であった。

<コース(往路)>
トロント(Toronnto)−ハイウェイ401−キングストン(Kingston)−ルート15−オタワ(Ottawa)−ルート417−モントリオール(Montreal)−トロワ・リヴィエール(Trois-Rivieres)−ハイウェイ40−ケベック・シティ(Quebec-City)
<コース(復路)>
ケベック・シティ(Quebec-City)−ルート171−112−セトフォードマインズ(Thetford-Mines)−ブラック・レイク(Black-Lake)−シャーブルック(Sherbrooke)−ルート108−ノース・ハトリー(North-Hatley)−マゴグ(Magog)よりハイウェイ10を約40kmで幹線道路を離れて東部ワイン街道−ラック・ブロム(Lac-Brome)−コウンスヴィル(Cowanville)−ダナム(Dunham)−ベットフォード(Bedford)のワインセラーを訪ねて再び北上、メープル街道のハイライトとも言われるリゾート地ロンシャン(Laurentians)へ。これよりオタワ経由ルート7を辿りながらトロントへ
全行程 約2,500km
<ルート付近のリンクポイントをクリックしてみてください>
●シェフリー鉱山
ケベックシティを後にルート171を南下、約70kmでルート112を西へとコースをとる。112号線に入ると、それまでいくぶん起伏のある単調な緑の大地をひた走っていたが、風景に変化が現れてきた。それは緑の林の中に三角錐の山がいくつも見え隠れするようになり、その数は次第に増していく。以前、九州や北海道で目にした石炭のボタ山と同じ形で色は灰色だ。なにかの鉱山跡のようだ。灰色のボタ山と、時折小さな町や工場のような建物が車窓を通り過ぎる。約50kmで案内所を兼ねた建物に立ち寄った。
地名はセトフォードマインズ(Thetford-Mines)とあり、この案内所で、灰色のボタ山の正体を知った。
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 アスベスト・シェフリー鉱山
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 アスベスト・シェフリー鉱山
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アスベストを採取する鉱山で、1879年から1970年代までの約100年間操業した、カナダの輸出が最も多い鉱物だ。人体に悪影響があるとして世界的に問題にされ、現在は、アスベストが禁止されていないインドなど少数の国に輸出しているとか。完全に採掘が停止しているわけではない。ここではアスベストの採掘方法のパネルでの紹介や、製品(建築材や断熱など)などが展示されている部屋もあった。
案内所から1kmほど先には、アスベストの露天掘りがあり、一般に見学ができるようガラス張りの展望台があった。この日は休日だったが、現在労働者は400人、大きなすり鉢型に掘られた底に大型トラックが数台見えた。
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●イースタン・タウンシップス(Eastern-Townsips)
モントリオール(Montreal)の東約80kmのシャーブルック(Sherbrooke)から南に広がる一帯のことをイースタン・タウンシップスという。18世紀、アメリカ独立戦争時に、最初はケベッコワ(フランス系住民)が住んでいた土地に、革命側に反してイギリスを支持したロイヤリスト(英国王党派)が多数移住したところ。両者の文化が融け合い独特の趣きのある町が形成された地域だ。
緩やかな丘陵と平地の広がりに、大きく分けて6つの地域があり、果実園やブドウ、麦やトウモロコシ畑などが点在し、それぞれに個性的な家々やワイナリーもある。アウトドアレジャーはカナダ全土で盛んだが、平地の多い中央、東部はハイキング、キャンプとともに、サイクリングが人気で、湖や川沿いなどに沿ってサイクリングロードが整備されている。
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 平坦な田舎道にいくつもの湖が現れる
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 菱形の信号サイン
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イースタン・タウンシップスへの起点となるシャーブルックは、この地域の経済や行政の中心で、人口13万人を数える大きな町である。メインロードは、町を東西に貫抜くように走り、街路樹をはじめ、町全体にカエデが茂る。北部には保存住宅群に指定された一画がある。イースタン・タウンシップ全体の案内所がある。沢山のパンフレットなどが用意されている。
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シャーブルックから南へ20km、アメリカ国境に近いコーティクック(Coaticook)付近には、深い渓谷沿いに遊歩道があり、「世界一」とギネスブックに登録されたという立て看板の立つ歩行者専用の吊り橋があった。長さ169m、高さ50mで、完成当時の1988年では世界一の歩行者専用の長さを誇ったのだろう。ちなみに九州大分の「夢の大橋」は、長さ390mで平成18年(2006)完成したもの。高さ50mの谷底は、遊歩道があり川沿いや森林の中を所要時間約1時間の散策コースとなっている。
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 水と緑豊かなノース・ハトリー
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 裕福なアメリカ人の移住地ノース・ハトリー
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このエリアにはアメリカでも南北戦争後に、富裕階級のアメリカ人が移住してきたというノース・ハトリー(North-Hatley)という人口1,000人足らずの小さな町がある。湖の北側に面し緑豊かな中に瀟洒な建物が建つ。
また、湖畔沿いには開拓当時の木造やレンガ造りのおしゃれなレストランやカフェがあり、リゾートホテルもある。湖水は澄み、白い帆を広げた小さなヨットは何艘も湖面を滑るように行き交っていた。
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 おしゃれなカフェのビックなカップ
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ノース・ハトリーから国境を越え南北に20km近くも細長いメンフレマゴグ湖の北を通り、ハイウェイ10を東に約30km走る。ここからルート202沿いのワイン・ロードを行く。
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●ルート・デ・ヴァン(Roure-Des-Vins)
カナダ・ワインといえばトロントの南、オンタリオ湖を望む丘陵地に広がるオンタリオ・ワインと西部ロッキー山脈の麓の2ヶ所が知られている。もとは開拓者達の手で、200年も前からヨーロッパから伝承した技術によって製造された。地元の小さなワイナリーもあったが、カナダ・ワインとして生産量が増し、世界に知られるようになったのは最近のこと。
東部ケベック州のワイナリーは、まだ10年余りという若い畑のブドウからはじまったばかりという。
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 果実狩りもできる
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 葡萄と並んで果実も豊富
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イースタン・タウンシップ全体にワイナリーは点在するが、地域の西の端ルート202沿いには、10ヶ所ものワイナリーとリンゴ、ブルーベリー、イチゴなどの果実園が並ぶ。といっても広い土地に点在するとあって、すべてを訪ね歩くには1日を要する。
ハイウェイを出るとすぐに出合う町は、ノールトン(Knowlton)だ。エリアの中でも初期に移住があった町で、ラック・ブラン(Lac-Brom)湖(英語ではブロム)の南端に位置する。ビクトリア様式の建物も残り、通りに面した家では、古い建物を活かしたアンティークショップを開いているところも多い。
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 ビクトリア様式の建物が多いノールトン
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 ワイン畑はまだ若い
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 四角い信号のサイン
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 レストランなどが併設されているワイナリー
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 ワイナリーでは試飲もできるが ドライバーはダメ
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これよりシャーブルックの案内所で手に入れたワイン・ロードマップを頼りにワイナリーを訪ねた。ブドウの木はどれも若く、ワイナリーの規模は小さい。ほとんどが個人経営で家族だけのワイナリーもある。
ワインロードの中心地ともいえるダナム(Dunham)はケベック・ワインの最大ワイナリーだ。ワイン生産は白が主でロゼや赤もある。まだ10年ほどという歴史のせいか、コクとまろみが欠けているようだが、口当たりは軽い。どこも試飲はさせてくれるが、2カナダドル(約170円)というところもあった(飲酒運転は厳罰)。
ほとんどのワイナリーでは軽食とカフェまたは本格的なレストランが併設されていた。
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●ロレンシャン(Laurentians)
モントリオール(Montreal)北部に広がる高原地帯で、かつては結核治療の為の保養地だったが、現在はリゾートエリア。モントリオールからハイウェイ13号線と一般ルート117号線が平行して走る約100kmの間に、おしゃれなブティックやカフェ、レストランのある町や村が点在する。
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 ルート117沿いにはブティックやカフェが並ぶ
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 サン・ソヴェール・デ・モンへの道 ルート364の標識
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 ロレンシャンの街道沿いには 沢山のショップがある
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 レストランの壁の装飾
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メープル街道のハイライトとして有名なばかりか、春から秋にかけては乗馬やハイキング、冬は犬ぞりやスキーが楽しめる。
また湖も多く、カヌー、ヨットや観光船でのクルーズなども盛んだ。とくに、山岳地の少ない東部でありながら世界最大級のナイトスキーの設備を整え、夏にはウォータースライダーも楽しめるところもあって、季節を問わず、観光客やのんびり休暇を過ごすリゾート客で賑わう。
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 ロレンシャン・サンタデールのレストラン
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 ロレンシャン地方の教会の屋根は銀色
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 ロレンシャン地方の町
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モントリオールから最も近いスキー場のある町で、アウトレットモールもあるサン・ソヴェール・デ・モン(St-Sauveur-des-Monts)への分岐点を過ぎ、小さな町サンタデール(Ste-Adele)、サーブル湖(Le-Lac-des-Sables)のほとりに出た。さらに秋のメープルが色づくころ人々を魅了するというサンタガットゥ・デ・モン(Ste-Agathe-des-Monts)を経て、着いたところはロンシャン観光のメインであるモン・トランブラン(Mont-Tremblant)だ。
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●モン・トランブラン(Mont-Tremblant)
ロレンシャン地方の最高峰モン・トランブラン(標高857m)を中心に広がる大リゾートエリア。山裾には、高層のリゾートホテルやマンションが並ぶ。観光案内所前からモン・トランブラン山頂へのゴンドラ乗り場までは、無料ケーブルが運行している。
ケーブル周辺は、子供用の固定されたバンジージャンプやトランポリン、ローラーボブスレーなどの遊具がある。その近くには、レストラン、ブティック、カフェ、みやげもの屋などがぎっしりと軒を連ね一つのテーマーパークとなっている。
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 観光地モン・トランブラン
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 リゾートマンションが並ぶ
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 町の中をケーブルカーが行く
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 ケーブルカー
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40人乗りくらいの大型ゴンドラで上った山頂からは、緩やかに丘陵のように広がる山々が見渡せ、眼下にはモン・トランブラン湖が見渡せる。周辺にはハイキングコースも整備され、新緑や紅葉の季節は、ハイカーが大勢訪れる。
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 モン・トランブランの山頂からの眺め
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●モンテベロ(Montebello)
モン・トランブランからルート323を約80km、オタワ(Ottawa)の東約70kmのモンテベロ(Montebello)へ出た。モンテベロはメープル街道の中にあり、サミット会場にもなったフェアモント・シャトー・ホテルがあるところ。ロンシャン地方の東端で、ホテルというより広大な敷地にゴルフ場、テニスコートから散策路などの施設を持ち、ログハウス様式の豪華なロビー、レストランからアメニティ設備を整えた高級リゾートである。
このホテルの周囲は、放し飼いにされたバイソンやムースなどを車に乗ったまま見ることができる公園にもなっている。
町は、ホテルの敷地から3kmほど東にある。ここからオタワを経由して、開拓時代の道といわれるルート7をトロント(Toronto)へ向けて走った。古い時代の面影を期待したが、平坦な道のりのところどころに小さな牧場やトウモロコシ畑が点在する単調な道であった。
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 モンテベロ付近
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 トロントへの道ルート7沿いの牧場
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 まっすぐ延びるルート7
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- ・カナダ観光局
- エリア別や目的別に観光情報が用意されているほか、メープル街道の詳しい案内も見られる。
取材:2009年8月
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